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【徹底比較】自動車補修用塗料:DIY缶スプレー(1K) vs プロ用2液ウレタン(2K)

  • 執筆者の写真: 吉田 裕志
    吉田 裕志
  • 11月3日
  • 読了時間: 6分

模様塗料イメージ
※写真はイメージです



飛び石の傷や小さなサビ、自分で直したいカーオーナー様へ>

愛車についた小さな傷や塗装の劣化は気になりますよね。ホームセンターやカー用品店に行けば、手軽な缶スプレー(1K塗料)やタッチペンなどが並んでおり、「これでサッと直せる」と手に取る方も多いでしょう。

しかし、数ヶ月経つと「塗った部分だけ色がくすんできた…」「給油時にガソリンが垂れたら塗料が溶けた!」といった失敗談も少なくありません。

なぜ、市販の塗料とプロの仕上がりにはこれほど差が出るのでしょうか?

この記事では、DIYで使われる1液性(1K)塗料と、プロの板金塗装業者が使う2液性(2K)塗料の決定的な違いを解説します。あなたの補修目的(手軽さか、耐久性か)に最適な塗料選びの答えがここにあります。



 この記事の目次

<DIY缶スプレー(1K) vs プロ用2液ウレタン(2K)>

自動車補修用塗料の基本知識:「1K」と「2K」は硬化方法が全く違う

<まとめ>



 自動車補修用塗料の基礎知識:「1K」と「2K」は硬化方法が全く違う

塗料の「K」は「Component(成分)」を意味しており、1Kは1つの成分で完結する塗料、2Kは主剤と硬化剤の2つの成分を混ぜて使う塗料を指します。

この成分と硬化方法の違いが、耐久性に決定的な差を生みます。

比較ポイント

DIY用缶スプレー(1K:1液性)

プロ用2液ウレタン(2K:2液性)

主成分

アクリルラッカー、アクリルエナメルが中心

ポリウレタン樹脂(硬化剤混合型)

硬化方法

溶剤の揮発による乾燥(物理乾燥):塗料が乾くだけで化学変化なし。

主剤と硬化剤の化学反応(化学硬化):塗膜が分子レベルで架橋し、強固になる。

耐久性

低い(溶剤、摩擦、紫外線に弱い)

非常に高い(プロ品質の耐候性、耐薬品性)

光沢(ツヤ)

浅い光沢、塗膜が柔らかく傷がつきやすい

深い光沢、塗膜が硬く、高い平滑性が出る

必要な機材

缶スプレー、簡易マスク、新聞紙

スプレーガン、コンプレッサー、防毒マスク、換気設備



 性能面での決定的な違い(プロの仕上がりを分ける要素)


<塗膜の強度:ガソリン・ケミカル耐性>

1K塗料の塗膜は、乾燥しても基本的に柔らかいままです。これは、塗料が**「溶剤が蒸発して固まっただけ」**の状態だからです。そのため、ガソリンやパーツクリーナー、強力な洗剤などの溶剤が付着すると、塗膜が簡単に溶けたり、ふやけて変色したりします。

一方、2K塗料は、硬化剤を加えることで主剤の分子が結合し架橋反応、プラスチックのような強固な塗膜を形成します。これにより、ガソリン、酸性雨、摩擦、紫外線に対して圧倒的な耐久性を発揮します。車の外装補修に2Kが必須とされる最大の理由です。


<光沢(ツヤ)と膜厚:鏡面仕上げの可否>

新車のような深みのある光沢は、塗膜の厚さと硬さによって生まれます。

·         2K塗料は硬化剤のおかげで厚い塗膜を作ることができ、完全に乾燥した後、サンドペーパーやコンパウンドでしっかり研磨(磨き)しても剥がれにくいです。この工程によって、ムラのない鏡面仕上げが可能になります。

·         1K塗料は塗膜が薄く、柔らかいため、本格的な研磨作業に耐えられません。そのため、ツヤが浅く、数年でクリア層が劣化し、白っぽくなるチョーキング現象が起きやすいのです。



<色合わせの精度>

プロの業者は、専用の調色機と過去の膨大な配合データを用いて、調色をします。また車種・年式だけでなく、紫外線で微妙に変化した現在の車体の色には熟練者のアナログ技術も合わせて塗料を調色をします。

これに対し、1Kスプレーはメーカーが定めた既製色であり、車体の実際の現在の色とはズレが生じやすく、補修部分だけが浮いて見える原因となります。



 DIY用缶スプレー(1K)のメリット・デメリット

メリット

デメリット

✅ 初期費用が安く、誰でも手軽に始められる

❌ 塗膜が弱く、耐久性に欠ける(外装の長期使用に不適)

✅ 設備が不要で、小面積のタッチアップに最適

❌ 完全な鏡面仕上げは難しく、プロとの差が出やすい

✅ 失敗してもシンナーで拭き取りやすい

❌ クリア層が弱く、数年でチョーキング(白化)しやすい

<おすすめの用途>

応急処置、小さな飛び石傷のタッチアップ

 内装やエンジンルーム内など、溶剤が付着せず、高い耐久性を求めない箇所の塗装

※ただし、色の制度は相応となるためある程度の妥協が必要



  プロ用2液ウレタン(2K)のメリット・デメリット

メリット

デメリット

✅ 新車同様の高い光沢と驚異的な耐久性を実現

❌ 初期費用(スプレーガン、コンプレッサーなど)が高額

✅ 紫外線や酸性雨からボディを強力に保護する

❌ 硬化剤を使用するため、余った塗料の再利用不可(使い切り)

✅ 本格的な補修・全塗装に必須の高品質

❌ 有機溶剤の毒性が強く、専用の防毒マスクが必須

<おすすめの用途>

外装パネルの広範囲な補修(バンパー、ドアなど)

ホイール塗装

耐久性と美しさ(色の再現性)が求められる箇所全て



 結論:目的に合わせて賢く選ぶべし!

<あなたの補修目的別・最適な選択肢>

目的

推奨塗料

備考

【手軽さ優先】 小さな傷の応急処置

DIY用1Kスプレーまたはタッチアップペン

傷が目立たなくなる程度の補修に。

【プロ並みの耐久性】 外装の目立つ補修

プロ用2K塗料が必須

スプレーガンが理想。近年は硬化剤内蔵型の2K缶スプレーも登場している。

【内装部品・足回り】 見た目が主で摩擦が少ない部分

DIY用1Kスプレープロ用2Kかは判断が必要

耐久性が低くても問題ない箇所に利用。※色の再現性をどこまで考慮するかはあなた次第



<まとめ>

いかがでしたでしょうか?どちらにもメリット・デメリットがあり、適材適所で使うことが望ましいという結論となりました。しかし自動車の塗装は、単なる色付けではなく、ボディを錆や劣化から守る保護機能が最も重要です。特に外装は、太陽光や雨風に常に晒されるため、2K塗料の高い耐久性が長期的にはコストパフォーマンスに優れます。その点を理解することも重要でしょう。

またDIYで2K塗料に挑戦する際は、塗料の品質だけでなく、安全対策が非常に重要です。有機溶剤は人体に有害なため、必ず専用の防毒マスクを用意し、換気を徹底して作業してください。

小さな傷も放置せず、用途に合わせて最適な塗料を選び、愛車を美しく長持ちさせましょう!



社長の似顔絵

[記事を書いた吉田裕志について]


吉田裕志(よしだ ひろし) B型 職人気質

有限会社レインボーペイント代表取締役

調色歴20年以上、国家資格である単一等級調色技能士、一級塗装技能士を持ち、

今でも調色に情熱を注ぐ

座右の銘 「背中の汚れは調色マンの恥だ」




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